アフリカ日記
Jant-Biでの滞在制作。5月8日。

テキスト・写真 水野立子 
2014.5.8

8.jpg

滞在しているホテルは Sobo Bade。昨夜、部屋に入る時、日本のように電燈がない真っ暗闇の通路を無防備に歩いていると、突然何かに頭を強打した。いよいよこれでダメかと思ったが、何事もなきを得た。度々、このようなことがあるが頭蓋骨がよほど丈夫らしく、いままで無事できている。翌朝起きて見てみたら、窓枠として80センチくらい鉄枠が飛び出ている。こりゃあ気が付かん。

5.jpg

ここはアーティスト・ホテルと言われているようで、アフリカ内や海外から主にミュージシャンが何人も長期滞在している。ホテルの敷地内にスタジオがありいろいろな種類のジャンベや、みたこともないような打楽器が並んでいる、ダンスと一緒に遅くまで練習している。後で知るのだがこの中のミュージシャンが翌日のノーラの発表のとき演奏してくれた人だったり、観客として見に来てくれていた。

6.jpg

昨夜はこの村で何かの祭りがあったようで、夜までジャンベの音が響き渡り寝不足の朝を迎えた。ホテルの宿泊客は、スペインやフランスから白人が観光として滞在している。海が目の前、猫が庭にたくさんいて、バケーションでくれば楽しいだろうなあ。しかしホテルから一歩出れば、普通の村の暮らしがある。

7.jpg



Jant-biに向かう

朝9時頃、ノーラが滞在しているJant-bi に向かった。
まずはJant-biの紹介。1998年ダンスカンパニーの拠点としてまた教育機関として、岩と赤い砂と山に囲まれた何もないところに建設開始。現在は男性と女性のカンパニーをつくり、世界ツアーなどの活動している。一言で大変ですね、と言えない力が結実している。ディレクターはGermaine Acogny さん、息子さんPatrick Acognyはアシスタント・ディレクター、アドミストレーターとしてHelmut Vogtさんと、スタッフ3名が常勤している。Germaine さんは、Motherと呼ばれ、みるからに威風堂々とした存在。アフリカのダンスにJant-biのテクニックをつくったアーティストとしてその存在は大きい。広大な敷地に野外シアターが2つと、生徒や講師用のバンガロー、ディレクターの家、学食など滞在施設がある。生徒や講師の食事のため村から女の人たちが10名くらいで、おいしそうな食事を料理してくれる。2時と8時、鐘の合図でみなが食堂に集まってくる。Jant-biサマースクールとしての3か月間コースは、海外からも受講できる。日本人も過去に数人は参加したことがあるようだ。湿気がないとはいえ日中は気温が高く、朝夜は冷える。砂とコンクリの稽古場、コンビニも何もない自然の中で、かなりハードなダンス修行と環境。いまどきの日本人ダンサーが参加できるかな。

30.jpg

ノーラに、皆で行うメディテーションがある、と言われ時差ボケでぼーっと見学にいったら、ディレクターGermaine さんが近づいてきて「靴下を脱げ」といわれ、ダンサーとNoraとGermaiと生徒30名全員と、一緒に四方を囲む自然に向かいメディテーションと深呼吸・歩行・など毎朝の儀式に強制参加。クラッ―と倒れそーになりながら、大自然の中の岩に立った。



父のような自画像―アフリカ版

ノーラにJant-bi全体を案内してもらった後、「父のような自画像―アフリカ版」の制作現場をみせてもらった。日本で滞在制作というと、冷暖房付きのリノ敷きのスタジオがあって、機材が揃っていてと想像するが、 ここでは、ノーラが滞在する部屋の前、野外に土を耕した4m×2mくらいのアクティングエリアをつくり、そこでリハーサルと発表を行うしつらえ。今回の作品が、“足跡を残す”ということが一つのポイントとなっているので、土が舞台となるにはちょうどよかったのだろう。
ノーラは女性。今回の作品では、父性つまり性を移行させて男性としてのダンスする体を探っている。ここに来る前、ジンバブエで男性・女性のダンサーに振付をしたダンスを自分の体に落とす作業をしているらしい。今回は、男性ダンサー Kaokack(カーラー)と触発しあいながらリハーサルを行っている。

22.jpg

京都での滞在制作では、能や歌舞伎にみられる男性が女性として演じる女形、女性が踊る男踊りー日本の伝統芸能に現れるその精神と手法を学びたいということが目的のひとつ。伝統だけではなく、現代の表現となった舞踏もそれに入るだろう。型、振り、手、精神、そのものになるということ、振りをしないこと。男性・女性の型を学んでも、それが目指すことと直結するほど安易なことではないだろう。京都での滞在を有意義なものにするため、明日までに何かをつかみたい、何かヒントを持って帰りたいと願う。
それにしても日本で調べてきたWEBの天気予報はあてにならない。真夏の暑さ。しかし、アジアのように湿気がまったくなく、乾っとした空気に救われる。ノーラたちは踊るときもちろん裸足、土ほこりと猛烈な暑さで、筆者はクラクラしながら撮影。ノーラもカーラーも、30分×3回、通しを平気でするからすごいなあ。アフリカ人はなんつー体力じゃー。14時からはさすがアフリカ人でも、陽の強さを避けるため、休憩タイムになるらしい。ちょうど食堂の鐘が鳴りランチタイム。ノーラは完全ベジタリアンなので、食堂のお母さんが特別に作ってくれる。熟したマンゴがおいしい、あと、しょうがのジュース。食後は、ノーラが入れてくれたコーヒーを飲みながら、京都滞在のミーティングをした。

20.jpg



生徒たちの成果発表の日

ラッキーなことに、今日がJant-Biサマースクールの3ヶ月間の生徒たちの成果発表の日だった。全然、知らなかったけど突然「さあ、みるよRitsuko」と言われ2時間、砂の劇場で公演を観た。アフリカの身体は強い。日本人のわたしは、もやしみたいだ。アフリカ太鼓ジャンベは、ダンスの迫力を倍増させる―女性リーダーのNdeye Seckは小柄なのに異常な体力とパワーで演奏する。15年叩いて女性で珍しいジャンベチームのリーダーになったとのこと。カッコよすぎる!日本と同じで最後は、生徒ひとりづつが達成感で高揚感あふれる自己紹介ダンス。みんな頑張ったんだなあ。

13あつまってきた人.jpg
14.jpg
16.jpg