アフリカ日記
アフリカの最終日。5月11日。

テキスト・写真 水野立子 
2014.5.11

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まだまだ知らない文化

ホテルからJant-bi まで歩けるよ、とみながいう。4キロ。そして皆、毎日歩いている。しかし、私には200%歩けるわけがないのである。方向音痴、灼熱の太陽、赤い砂の土の道、ヤギとか馬が放し飼いにされている信号が1個もない道なき道をどう歩けというのか。。。軟弱な私は毎日、デンバというダカール空港に迎えにきてくれた気さくなタクシードライバーに送迎してもらった。ノーラも別のアフリカの国に旅立ち、一人になった私をそのデンバが家に招待してくれるという。6ヶ月になる女の赤児を授かったばかりで、2年目の新婚の彼は幸せいっぱいである。が、部屋はダブルベッドのスペースしかなく暗ーいブルーのライト1個。日本とアフリカの経済状態は同じではないことを改めて思う。デンバは妻一人だが、一夫多妻制はここでは常識。同じ建物には第一夫人の部屋と第2夫人の部屋があるんだ、と見せてくれた。そういえば昨日のダンサー、カーラーも3人の妻を持つ。そのことは別段おかしなことではなく、常識の範囲でありむしろいいねえ、という認識。ノーラは黒人の文化や差別、誇りについて、女性について作品として掘り下げることもしてきている。アフリカというまだまだ知らない文化は、底がみえないほど深く、私の目の前に現れる。

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飯名尚人氏に「車からの風景をiphoneでいいから撮影してきて」と言われていたので少しは撮影した。が何故か今回、ダンス以外の風景写真がほとんどない。日本ではみれない景色、人、村、子供、頭の上にたらいをのせて魚を売る女性、そういったいわゆる絵になる写真ショットがいくらでもあったのだが、見知らぬ人にカメラをむける心の余裕持てなかったということなのか。遠慮がちになったのか、躊躇する自分がいた。帰国してからきっと残念だなと思うだろう。

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軟弱日本人の自分がいる

5日ぶりにダカールへ移動。都会的なホテルにきて、勢いよく流れる普通のトイレと、ネットが速く繋がるということに安心する自分がいる。そしてお湯のシャワー。日本を出てから5日間、海の潮風にベトつく頭だったが、チョロチョロと水しか出ないシャワーでは洗髪は考えなかった。ああ、軟弱日本人の自分がいる。矢のようなアフリカ初体験が終わってしまう。なんだか悔しいなあ、と感じるこの悔しさはなんなんだろうか。

村の水は赤かった。その赤いというのは土からくるから危険ではなない、と言われた。鉄を含み塩の味がする自然でクリーンな水と、化学薬品で洗浄したという先進国の水と、どっちがクリーンだと信じるのか。

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はるかな距離

短い滞在中、最後まで現地の貨幣セーファーという通貨に慣れず終いだった。金の単位は難しい。そして、それを考えていくうちにとても疲れ暗くなる。きっと何のために考えているのか、を考えるからさらに疲労する。「金の仕組みを考えると、人の心の中には最初から悪魔がいるか、いないのか、という問いにぶつかる」と、マネーというシリーズで写真作品をつくりだした写真家の平野正樹氏の話に思いを馳せる。ノーラが振付・出演する作品「熱風」(飯名尚人作)では、この平野氏の人生や思想が深く作品の軸としてかかわってくる。なんだかいろいろなことが、つながっているなあ。昨日までいたToubab Dialaw と日本は、実際の距離の遠さより生活や経済や何が重要かという概念の違いに、はるかな距離を感じる。

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