日記
ノーラの京都レジデンス・クリエイション レポート
テキスト 水野立子
2014.8.18
第2週目
2014/8/11(月)
先週1週目の滞在制作では、料理でいうところの仕込み下ごしらえ週間、今週はいよいよ調理に入る感じ。アシスタントから出演ダンサーとなった佐藤、垣尾の二人の男性ダンサーも交互の稽古参加から、連日二人での稽古に変わる。今日から後半部分をつくりだす。バレエの上にひっぱられる体から、地面に近づく腰を深くおとすアフリカの体、両方の真逆のダンスを踊るらしい。
18時からのダンサーWSでも、同様にこのアフリカの体にいきつくまでを稽古するそうな。冷房を入れない虎の穴のような蒸し風呂道場で、ダンスする3人の体から汗がしたたり落ちる。
17時過ぎの稽古終わりで、今豹子さんが追加となった衣裳というか、小道具というか、の助っ人にきてくれた。赤玉制作、簡易帯の仕掛けなど、和風衣裳のプロの手を借りる。助かった。白虎社の時、使っていた赤く染めた真綿をノーラにプレゼントしたら、すごく喜んでバラや頭飾りにして舞台で使いたいと。「頭飾りはね、孔雀の鶏冠なのよ。」ノーラは真綿が大気に入りで「ビューティフォー」を連発していた。
休む間もなく18時からダンサークラスのWS。ノーラは受講生に、「私は教えることはしない、退屈だから。それに皆には自分で自分の体を探してもらいたいから。」と話す。大地に近づくために腰を落とす、背中を自由自在に柔らかくまげる、動きを繰りかえす。初めての日本人のダンサーへのノーラの感想は、「皆、集中力高くまじめに向き合う、GOOD!」だそうです。ショーナーというカッコイイ若者アフリカ人男性の歩き方、踊り方、を伝授。終わったあとは皆、明るくはつらつとしてエネルギーをもらった。
会場の入り口に出演者や舞台写真のパネルやプロフィール、飯名尚人さんが編集してくれた予告篇映像も流し、もうすぐ発表だぞー!と盛り上がる雰囲気。私たちスタッフは事務所に帰って宣伝作業を進める。長い1日。
2014/8/12(火)
11時に衣裳デザイン・制作の清川さんが、ノーラのジャケットの仮縫いを完成させて持ってきてくれた。ワイルドで繊細。18時までの稽古で、男性ダンサーへの振付がほぼ終わった様子。「あとは、ケンタロ、マサル、二人に渡したからね。稽古してねー」と、もくもくと別々のパートを踊り込む。18時からオープンクラスのWS、40名の参加者と大汗を流す。アフリカンダンスは、体がほてる、熱くなる、頭と身体が軽くなる。ノーラがポツリと「どんな人にもダンスがある。ダンスが踊れる。それがダンスの素晴らしいところ」
2014/8/13(水)
昼、京都新聞の取材を受ける。14時から、舞台仕様についてテクニカルチームが集まりミーティング。色々なアイデアが出ていて、それぞれに課題があり、さあ、いよいよ何がベストなのか決めねば、という時期がきた。ノーラの構成、コンセプトに近づける舞台、音響、照明、小道具の設置を探す。9割方、決まってきた模様。ワイルドな舞台仕様になりそう。ノーラは「舞台」という規制概念とは無関係に、決めていくのがおもしろい。キーワードは、リング、戦い、実像、影、分身。ここにきて、ノーラのアフリカへのこだわりが、“実感”できるようになってきた。
2014/8/15(金)
昨日、今日と通し稽古をして足りないところを自ら確認する稽古が続いている。通し終了後、MasaruかKentaroが、1階にある前田珈琲でコーヒーをテイクアウトして、録画した映像をノーラとダンサーで観る日課。男性の衣装も決まり、動きが深まってきた感じ。ノーラは自分のパートをもくもくと稽古する。当初のプランから変わり、「Ritsuko 小さいスピーカーあるだけ持ってきて」と言われて事務所のPCスピーカーを4セット引っこ抜いてもってきた。ランダムに色んな音が出ている。音響の斎藤学さんがようやく来てくれた。斎藤さんはデカイ、185センチ。そのガタイで公演時もウロウロするかも。
2014/8/16(土)
タイトな日々が続いていたので、男性ダンサー2名がお盆で実家に帰って行ったので、京都にきて初めての余暇を計画。京都のお盆の行事、送り火・大文字をノーラにみせたくて、屋上から見えるというビューポイントを確保。京都芸術センターで3日前から作品制作が始まった高嶺格さん、柏木規与子さん(NY在住)、梶村昌世さん(ベルリン在住。飯名尚人さんと知り合い!)のチームのメンバーも誘ってゆかた、大文字パーティーへ。20時の点火にぎりぎり間に合うタイミングで大雨がやむ。大・妙・法・船・左大・鳥居―高いビルがない時代、この火が京の町のどこからでも見れた時代があったなんて、勇壮だったろうなあ。送り火に手を合わせながら、先祖よりもこのプロジェクトの成功を祈った。
2014/8/17(日)
狂言の茂山童司さんにレクチャーを受ける。想像以上に若い師。バイリンガル狂言を開発した童司さんは、むろん通訳なしでお話しをしてくださる。笑いは「は」悲しみは「へ」。狂言の中の女性はどう扱われていたのか?袴は、どうしてこんなに幅広くデザインされているのか?意味があるはず、と童司さんに質問を投げる。「うーん、わからないなあ。調べておく」ということもあり。
レクチャー後、ノーラは先週の日曜に時間を間違えて見れなかった「リアリティのダンス」を見に行く。明日の月曜から「父のような自画像」の最終週が始まる。